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 ……………多分(笑
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 ・魔法少女を好きになるケース


  ケースその1

『やっぱりサ●ーちゃんやアッ●ちゃんじゃないかな? 普通では出来ない事が出来る
し、アッ●ちゃんなら綺麗なコスチュームもたくさん着れるし』

 こういう手合は、まず英雄願望より変身願望、崇拝対象への同一化を望む傾向が強い。
このままでもヲタク化するのは十分に可能なのだが、ある種女性的傾向とも言える現実
偏重型思考により、このまま偶像崇拝――要はTVアイドルへの憧れ――等に流れるの
が世の通例となっている。無駄に金と手間をかけた、年齢に不釣合いも甚だしい、正に
“衣装に着られている”と表現するに相応しい彼女ら偶像も、アニメ脱却のスケープゴ
ートに過ぎないのだ。
幾らアニメに登場する彼女ら魔法少女が生き生きと躍動していても、結局はアニメの制
約により99.99%ユニフォーム化した衣装に、いずれ飽きてしまうものだ。アニメ
に登場するキャラクターが持つ生き様、存在意義、行動理念も、結局伝わり切らなけれ
ば只の戯言に過ぎん。アニメを離れ、現実の偶像――ある意味矛盾した表現だが――に
すがるのも、彼女らの思考論理からすれば至極当然といえよう。そもそも、アニメのキ
ャラは余程のイベントが起きない限りは着替えない(※1)という文法を理解しようとしな
かった時点で、ヲタクへ続く列車を途中下車したも同然なのだから。



  ケースその2

『魔●宅のキ●かな〜。ホウキで飛べるのもいいけど、あんな素敵なパン屋さんにいら
れるのがいいよ〜』
『ええーっ、それよりト●ボくんとのラ・ブ・じゃないのーっ』


 これは一見、ヲタク化が非常にし易い会話に取れる。だが、彼女らはアニメキャラを
自分の境遇に当てはめ、自分が体験したい理想のシーンを脳内に構築しているに過ぎん。
つまり、ヒロインの境遇を自分が体験したつもりになり、恋人役を片想いの異性に置き
換えて悦に浸る……。簡潔に言うなら、自慰行為だ。もっと簡潔にいうなら妄想だな。
そも、ヲタクの原点もここにあると言えるのだが、こういった現実への投影を望む彼女
らは、現実とアニメのギャップによって程無く挫折し、夢や希望が当り前のように実現
できている空想世界に、ある意味厭世観にも似た感情を抱くようになる。こうなれば二
次元世界からの脱却も遅からず実行される。こうして、また一つヲタクへのステップア
ップが阻まれる訳だな。




  ケースそのさ――

「もういいっての。話が長すぎる」
 小指を耳の穴につっこんでほじる素振りをしながら、うんざりとした表情で、男――
千堂 和樹――は嘆息した。

 すると、これまで語っていた男――九品仏 大志――は、いかにも意外なモノを見た
ような顔をした。
「まだ二つしか語っていないぞ、同志和樹。前にもどこかで言った気がするが、短慮は
愚者への一本道だぞ」

「つーかその話は前にも聞いたっての。高二くらいに」
 姿勢は変えず、イライラ度は若干増した様子の、和樹。

「そうであったか? 我輩とした事が何たるフカ・ク!」
 “ダメだこりゃ”なオーバーアクションをとる大志。


「つーか、瑞樹の話からなんで魔法少女の話に移るんだよ? お前の話題はいつも唐突
に変わりやがるから全く訳解らん」








大志のヲタク進化論
Written by Ranke









 取り敢えず状況説明――

 同人デビューから8ヶ月弱。夏こみでの千部完売という――由宇達に言わせれば――
快挙を俺は成し遂げ、9、10、11月と順調に俺は歩んできていると言っていい。
 そしてこの8ヶ月の間に、即売会会場を中心として、俺の人間関係も大きく変わった。
多くの同業者仲間ができた。南さんを始めとするスタッフの人とも、かなりの人数と交
流を持てている。――それじゃ、これまでの人間関係はどうなったのか? 大志の場合
は相変わらず。ていうか、あの野郎が変わる事は最早一生ないのではないか――否、絶
対にないと確信している。

 瑞樹の方はどうか? 実を言うと、あいつが一番解らない。仮病使ったと思ったら飯
作りに来たり、売り子してくれたと思ったら変に情緒不安定になって俺の原稿破こうと
したりと、まぁ色々あった。それだけで済んだなら別に、只単に“おかしい”だけでい
いのだが、あいつは解らない上に“変”なのだ、今は。
先日の11月のこみパで、あいつは事もあろうに、自分が最も嫌うヲタク達の最筆頭ア
イドル、カードマスター・ピーチのコスプレをしたのである。コスチュームは微に入り
細に入り設定に対して忠実に造り込まれ、小道具のステッキも、自身が恥を忍んで子供
向け玩具店で買い、更にはヘモヘモぬいぐるみまで作って肩に乗せるという念の入れ様。
これまでの言動を全てひっくり返してもまだ足りないほどの転換振り。
 ここ数日、大学でもアニメの話題に横槍入れてこないどころか割と話に乗ってきたり
と、アイツの挙動不審は今がピークであった。




「そーだよ、瑞樹がなんでコスプレに走ったのか、て事だったじゃねぇか」

「だからこそ、先程の話が重要なのではないか」
「?」
 首をかしげる和樹。

「解らんか? 如何に人間十九や二〇歳を超えようが、男・女は皆須らく少年・少女だ
ったという過去そのものは変わらんのだ。大抵の男は、少年時代は無敵の英雄や不屈の
闘志を持つ者に憧れ、対象への同一化を切に願ったものだろう。女性は可憐な美少女に
憧れ、特別な力――解り易く言うなら魔法――を使えるようになりたいと願ったものだ
ろう。
 如何に齢を重ねようと、――俗社会的価値観で――夢と現実の境界を自覚しようと、
その時に見た夢の欠片は、楔となって深層心理に残るものだ。現実に生きると決めた筈
の彼や彼女が、その当時の夢を懐かしむ事で、明日への英気を養えるという事実その
ものが、過去に見た夢の表出とそれへの依存に他ならない。

 そこで同志瑞樹の話だが、何らかのきっかけがあったにせよ、その素養があった……
と判断するべきだな。我輩はこれまでに何人も哀しき無趣味から愛すべきヲタクに進化
した人間を見てきたが、同志瑞樹の変わり様はある意味特殊だ。そ――」
「そういえば、この前瑞樹に何渡してたんだ? なんか妙なはぐらかし方しやがったよ
な、あん時」
 10月のこみパが終わった頃からあいつの挙動不審は強まったが、大学での大志と瑞
樹の交渉の場面、あれこそが一番怪しいと考えていた。

「今更隠しても意味がないので言うが、あれはCMピーチのビデオだ。撮った時は無自
覚だったが、今では極上のレアフィルムと言える放映前のCF――それも前番組最終回
後バージョン――をも収録した、全話標準、S−VHS・ET録画仕様だ。
HDD・DVDコンボデッキにも録画し、DVDビデオに保存した方は我輩の宝となっ
ているぞ。それに――」

「あーーーっ!! もういいっての! 今回の黒幕もやっぱお前だった訳だな! 余り
にも思った通り過ぎて何も言えなくなったわい!!」
「だから短慮は愚者への一本道と言うのだ、まいふれんど」
「ああ?」

「くどいようだが、今回の一件には、我輩は直接関与しておらぬし、同志瑞樹自らの要
望に応じた事以外、協力らしい協力もしてはいない。つまり、全ては同志瑞樹の意志だ
という事だ」

「マジかよ……。あのスポーツ馬鹿の瑞樹が? 魔法少女に?」

「ある意味、非常に解り易いアニメからの脱却方法なのだよ、スポーツは、な」

「は?」

「アニメや漫画を楽しむ人間には、周囲の冷たい視線・扱いに耐えられる者とそうでな
い者とが存在する。耐えられる者は処世術を覚え、知識がはみ出さぬようにやたらと博
識になる。アニメ以外の知識も貪ろうとするのだな。こういう手合は日本史や世界史等、
史実の中の劇的出来事に感動を覚える者が多い。アニメに縋るか、新たな感動に縋るか
は本人の意志次第だが、アニメ以外の話題を作れると言う点では立派な処世術と言える。
こういうヲタクは生き残る。長くな……。周囲の視線に無関心でいられる者、己の嗜好
に誇りを持つ者は言うまでもないぞ。因みに我輩は後者だが。
 耐えられない者は、スポーツに逃げる。アニメや漫画に没頭する人間は、文庫本を読
んだり図書館で勉強する人間以上に、ネクラな印象を抱かれるものだ。いつでも綺麗に
自分を魅せたいと思っている婦女子であれば、一般的な価値観で言う爽やかなイメージ
を出すために、見栄えのいいスポーツを選ぶ。同志瑞樹であれば、テニスだな。アニメ
が好きだったという自分のコンプレックス解消の手段としてスポーツをする事で、自分
に、アニメ好きという以外の取柄ができた気分を得るのだ。如何せん、同志瑞樹にはそ
っちの方向に下手に才能があったため、長らくアニメを忘れる事が出来てしまったのだ。

 だが、さっきも語ったように、過去にアニメや漫画に夢を垣間見た人間は、その夢の
欠片を手放す事はできない。同志瑞樹もまた、夢の世界の住人だった一人なのだ――」
 特徴的な形状の眼鏡のブリッジをくい、と押し上げながら、大志。

「つまり、テニスで長らく抑圧されてた『魔女っ子アニメ好き』という感情が、俺や
ピーチの影響で再燃した、てことか?」

「そう言うことだ。状況証拠のみで事実関係の裏付が少ない、我輩の推測でしかないが、
かなりの確度で、な」


 まぁ、結局はこいつの言うことだし、本当か嘘かなんて考えるまでもなか――



	>>>>>




・数日後
 げるまんず付近――



『しょうがないじゃないっ!!
昔はあたしだって、魔法少女ものが好きだったんだからーっ!!』



 ――った筈だったのだが――
 俺の予想は、瑞樹のあんまりと言えばあんまり過ぎるコテコテなヲタク化によって見
事に外れたのだった。

「………………………………………………………ハァ」






 瑞樹逃走後――


『くっくっく、あーっはっはっはっは!!!

  見てしまったぞ! 聞いてしまったぞ! まい同志!!』


 無駄に高らかな哄笑を響かせる謎(?)の声の主……てーか、謎も糞もないが。

「…………………………………帰ろう」
 ヤツの居場所を探すのも億劫になり、踵を返して自宅へ向かう俺。

「無視は良くないぞ、まいふれんど」
 ぬっ、という擬音がぴったりな登場の仕方で、正面に大志が立っていた。

「ああ……、どっから沸いて出たって訊く気力すら失せる……」
 がくーん、という擬音ぴったりに肩を落とす俺。

「んにしても、殆どお前の言う通りだったな。瑞樹のヤツ」
 腕を頭の後ろで組みながら、呟く。
「我輩の審ヲタク度眼をなめてもらっては困る。高校時代、初対面の時に話した時から、
同志瑞樹は立派なヲタクに進化すると確信していたのだからな」
「なんだと?」
 如何にも疑わしげな眼差しを向ける。

「同志瑞樹のような純粋且つ耳年増なキャラクターは、得てしてヲタクになり易いのだ。
……否、逆だ。ヲタクの素養があり、ヲタクの英知に触れたからこそ、純粋且つ耳年増
になったのだ。同志瑞樹は、会話や態度の端々にそういった独特の癖を持っていた。
それで我輩は確信したのだよ。“類は友を呼ぶ”――まいぶらざぁに引き寄せられし彼
女、同志瑞樹は、同人界、いや世界を漫画で制す我が魂の双子こと千堂和樹を陰に陽に
支える、有能なヲタクへ進化するのだとな!」

「……………………………」
 ツッコミ所満載の科白に、突っ込む気力すら根こそぎ奪われる……俺の気分は今正に
そんな感じであった。
「いい加減にしろっての。どうせアイツは比熱が高い(※2)んだから、近い内 に飽きるだろ」

 俺がそう言うと、大志は立ち止まり、また眼鏡のブリッジを押し上げながら口を開いた。

「くっくくく……! 同志よ、マンガで世界を制すつもりなら、支配すべきヲタクの性
も、把握しておく事だ。因みに、これは助言ではない。警告だ。
 では、我輩は用事があるのでこれで失礼する。さらばだ、まい同志!」

 しゅたっ、という音と共に後方伸身2回宙返り1/2ひねり(※3)をきめた大志は、その
まま気配ごと姿を消した。
「相変わらず物理法則と人体メカニズム完璧無視しやがって………」
 俺の頭痛は、当分収まりそうになかった。





		◆◇◆◇◆◇◆





 3ヵ月後の春こみ――




「それじゃ和樹、あたしれーこのトコに遊びにいってくるからーっ」
 でかいリュックを背負って、瑞樹は立ち去ろうとする。
「ああ、解ってるだろうけど昼までには――」
「解ってるってっ。じゃ!」

 しゅたたた、という擬音がよく似合う走り去り方だった。
 言わなくとも解るだろうが、でかいリュックの中身は新作のコスプレ衣装である。
12月頭のあの一件以来、俺と瑞樹の関係はどうもなっていない。コテコテヲタク化し
た瑞樹には、周囲のやっかみその他の雑音が耳に入らなくなり――ヲタクは人の話を聞
かない
――、壁サークルならではの売り子志願者の増加、コスプレへの熱中度増進、
カメコ人気の急騰などに伴い、ブラザー2(俺のサークル)というより寧ろ、チーム一喝の新メンバー
と言う方がしっくりくる程にまでなってしまった。


「……………………考えてみれば、比熱は低かった(※2’)んだな………。最初は同人を
認めようとしてなかったし……」
「だから言ったのだよ同志和樹。やはり我輩が確信した通りだったな」
 まるで背後霊の如く気配をフェードインさせながら、大志の声が響く。
「いい加減に普通に登場しろバカヤロウ」
 ここ数日、雪国の雪かき&雪下ろしの雪並にステキで不毛に積もりまくったストレス
は最高潮を迎えつつあった。
「結局は同志瑞樹は環境に恵まれなかったわけだな。我々の年代までヲタクを続けよう
と思うかどうかは、自分の趣味に賛同する人間が周囲にどれほどいるかで決まるのだが、
高校時代までの彼女には、彼女の趣味を肯定してくれる者がいなかったのだろう。そこ
へ来てコスプレスペースとチーム一喝の同志どもだ。抑圧された変身・同一化の願望、
財政事情によって子供の頃は不可能だった事が今は可能だというのにそれが大っぴらに
出来ないジレンマ、社会的評価の下落を恐れて己の性癖を暴露できない友人関係……。
このヲタクの聖地・こみっくパーティーにはそれら全てが存在しない。同志瑞樹はここ
で一般人という仮面(ペルソナ)を捨て去り、己の本質(アニマ)を曝け出すという、ヲタクへの超進化を遂げ
たのだ。然るに――」
 どうやらまだ大志の話は続いていたらしかったが、俺の耳には最早何も届いていなか
った。
 大志ではないが、同志が増える事は俺にとっては嫌ではないし、寧ろ嬉しい。だが、
素直に喜べないのもまた事実。――場違いな雰囲気におどおどしていた、小動物の如き
仕種の瑞樹に萌えていたかもしれない俺は変態だろうか?

「あらあら、どうされたんですか? 和樹さん」
 悶々と悩む俺の正面に、南さんが現れる。

「あ、南さんすんません、ボーっとしてました」
 と、新刊を一冊取って渡そうとしたが、南さんは少し困ったような表情を浮かべてる。
「あのー……」
 困惑する俺。
「和樹さんて、特殊な属性をお持ちだったんですねぇ。知りませんでしたー」
「へ?」
 南さんはいきなり意味不明な事を宣った。特殊な属性? 属性っていやぁ、ここでは
先ず間違いなく“萌え”の事だよな。ってことは…………。
「…………っ!! ってまさか、さっきのモノロー……!?」
「流石だな、まい同志。世界を制すべき人間らしく、人と違った萌え属性を持つ……。
何と素晴らしい!! 我輩は不覚にも今まで気付かなんだ!! まいぶらざぁがよもや
“オドオド萌え・小動物属性・オプション:本来の性格に似合わず”だったとは!!」

 俺の当たって欲しくなかった予想を、全てコイツが代弁してくれやがった。
「なんや和樹、ほんならそうと早よ言ってくれたらええのに。したらウチがソッチ系の
同人誌なんぼでも提供したったのにィ」
 大志並の脈絡のなさで由宇が現れる。
「ちょおむかむか〜〜! いつもはあたしのそういう本をけなすくせに、自分が入れ込
んでたなんて〜。あんたみたいなのを、“蝋燭建造(ローソクケンゾー)”ってゆーのね!!」
 既に由宇のオプション並のお約束で詠美も登場。
 ――因みに『ローソクケンゾー』ではなく『同族嫌悪』が正しい――のだが、あまり
にもお約束を繰り返すのに飽きた俺たちはツッコミすら入れなかった。有態(ありてい)に言えば、
無視である。
 それはともかく、由宇に加えて詠美までやってきた事で、俄に騒がしくなる俺のスペ
ース。
 そんな周囲の環境、己の精神状態を含め、俺が取る事の出来た唯一の行動は――











「うがーーーっ!!!」











 取り敢えず、叫ぶ事だけだった。












	――強制終了――
















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	おまけ



「あ、あ…………ああああの、せ・せせせセンセイ、こん……にちわ!!」
「ああ、モモちゃん(仮)か。どうしたの? 今回俺は創作だけど」
「い、いえっ!! せ・せ、センセイのお話はど、どれも……スゴク面白くて、す、す、
好きですから!!」
「そ、そう? そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあ、今回の新刊……はいっ」
「あ、ありがとう、ご、ございます!」
 本を受け取り、がま口から五百円玉を出す。

「こ、これからも、頑張ってください!」
 言うなり、モモちゃん(仮)は疾風のように走り去っていった。

「ねぇ和樹、さっきのコ、知り合い?」
 コスプレスペースから戻って売り子をしていた瑞樹が訊いてくる。
「ん。まあ、知り合いっちゃ知り合いだけど」
 一先ず最初の波が捌けた後で余裕ができたので、大志が預かってきたスケブを描きな
がら応える。
「ふーん。モモちゃんって名前……」
 こちらは携帯ゲーム機で遊びながら、瑞樹。
「なんか理由あって本名を明かせないんだと。別段不便じゃないから聞いてないけど」
 アニメジャンルに最初に参加した時から来てくれている、お得意さんである。
「ふーん。なんだか、小動物っぽいコだったね」
「ぐっ。そのフレーズを使うな……、頼むから」
 ぐさりと何かが突き刺さるようなショックに、思わず筆が止まる。
「え? あたし何か言ったっけ?」
 先ほどの喧騒を知らない瑞樹は、悪意もなく言ってくる。
 関係ないが、午前中にどんなコスプレをしてたのか、今の瑞樹の髪型は横ポニでは
なく三つ編みだった。新鮮っちゃ新鮮だが、馴染みの薄い人間から見ると最早誰だか
判らんのがイタイ。

 取り敢えず、何気ない会話のようで実はヲタクにしか訳せない会話を自然に瑞樹と
交わしていた事に軽い脱力感を覚えつつ、俺は自分の嗜好について一度振り返ってみよ
う、と心に決めたのだった。




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 おまけのおまけ





 イベント後、自宅に戻った彼女は、買ってきたばかりの和樹の同人誌を広げる。

「今回はどんな話かな……あはっ、ラブストーリーだ☆」

 食い入るように読むモモちゃん(仮)。時々微笑んだり、真剣な顔になったり、
赤面したり、また微笑んだりと、傍から見ても中々可愛くて微笑ましい。

 ぱたり。
 本を閉じる。

「今度のも凄くよかったなぁ……。次も買いに行こう!!」
 そして、夕餉を作るために席を立つ。綺麗に片付けられた机に和樹の本を置いて。




 本の表紙に書かれたタイトルは……







 『不器用な君が好き』


 だった。








	おしまい

















執筆後記(あとがき)

 主人公が二転三転してるのは気のせいではないです(爆)
というより気にしてはいけません。………気にしないで、お願い(笑)

 多分、和樹って小動物属性(or好きなコ程苛めたくなるタイプ)だろうと思い、こん
な話に。因みに、大志の語るヲタク論や、和樹の趣味嗜好は筆者のそれとは無関係です。
その辺ご了承ください。


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